《第10問》
『充たされざる者』でライダーが子供の頃に独りで部屋でしていた遊びは?
正解
不正解
- 虫めがねで探偵ごっこ
- ぬいぐるみでままごと遊び
- 兵隊の人形で戦闘ごっこ
- 虫めがねで探偵ごっこ
- ぬいぐるみでままごと遊び
- 兵隊の人形で戦闘ごっこ
- 解説
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語り手のライダーは子供の頃、週に何度もプラモデルの兵隊を使って戦闘ごっこをして独りで遊んでいた(P16)*1。それが明らかになるのは彼の泊まったホテルの部屋がかつて彼が住んでいた「イングランドとウェールズの境にあったおばの家」(P16)であることに気づいたからであり、彼は幼い頃にそこの緑色のマットを戦場の茂みに見立てて遊んでいたことを思い出す。このように『充たされざる者』は、物語の端々にライダー自身の過去についての言及が現れ、現在の彼の境遇と重ね合わせるように語られる。その語り口はいわゆるリアリズム小説のものとは違っており、奇妙な印象をもたらす作品である。
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*1引用はKazuo Ishiguro, The Unconsoled, London: Faber, 1995 による。
*括弧内の数字はページを表す。また別の機会には、町のはずれの草むらにうち捨てられた父親の愛車に遭遇する。ライダーはここにもおもちゃを持ち込み、空想を交えながら一人で遊んでいた。これらの場所は、幼い彼が外界の困難からひきこもって逃避する場所でもあったことが作品中でも示唆される。おばの家の階下では、激しい口論が展開されていたが、彼はそれらを空想の戦場に見立て、兵隊達を使った戦闘物語を展開する。また車が止めてあった家の中からは口論する両親の声が聞こえてきたが、車の後部座席はその喧噪から彼を守ってくれる「聖域」(P264)だったのである。
空想の物語にひたりながら独りの世界に閉じこもろうとするライダーの性格は、大人になってからもピアノの練習は誰もいない場所を好むところにも表われているといえる。
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*括弧内の数字はページを表す。