Notice: Undefined variable: filter_strings in /home/la-kentei/www/la-kentei.com/COMMON/INC/def.php on line 935
すべての問題にチャレンジ!(75/80) | ロミオとジュリエット | リベラルアーツ英語検定クイズ

リベラルアーツ英語検定クイズロミオとジュリエット > すべての問題にチャレンジ!(75/80)

《第75問》
ファースト・フォリオと称されるシェイクスピア作品集(1623)に印刷された『ロミオとジュリエット』の本文の状態について述べた文として正しいものはどれか。

正解

不正解

解説

ファースト・フォリオと称される作品集(1623年出版)には、‘Mr. William Shakespeares Comedies, Histories & Tragedies (Mr. はMasterと読ませる)’ という主題の下に「真正の元原稿に従って出版した(Published according to the True Originall Copies)」という宣伝文句が付されている。本書の出版には同じ表題紙に名前が見える出版業者のエドワード・ブラウント(Edward Blount)及びアイザック・ジャガード(Issac Jaggard)の他にも、シェイクスピア作品の出版権利を有していた数名の出版業者がかかわっている。また、シェイクスピアの所属した国王一座のヘンリー・コンデルとジョン・ヘミングが寄せた序文は、収録された作品は彼らが「寄せ集めた」ものであること、また、それらが「完全な状態(perfect of their limbs)」であることを強調している。このことから、フォリオの本文はすべて一座が所有した「上演用台本」またはシェイクスピア自身の手になる「草稿」から直接起こしたものではないかと考えたくなるのだが、それは誤りである。
 

より詳しい解説を読む

フォリオの企画はアイザック・ジャガードの父ウィリアムの指揮によるものであったが、ウィリアムの関心事は、「完全な状態」のシェイクスピアを世に遺すことではなく、専ら、すでに斯界において戯曲作者として人気を博していた「シェイクスピア」の名を冠する前代未聞のフォリオを出版して財を成すことに傾いていたと考えられる(Adam G. Hooks, Selling Shakespeare: Biography, Bibliography, and the Book Trade, Cambridge UP, 2016, 第三章を参照されたい)。ウィリアムは、かねてより『情熱の巡礼者』と題される詩集を出版したり、シェイクスピアのいくつかの作品の出版権利を所有していたジェイムズ・ロバーツ(James Roberts)という人物から印刷所を買収するなど、「シェイクスピア」への投資に並々ならぬ関心を寄せていた。1619年には、それまでに数々のシェイクスピア作品を出版してきたトマス・パヴィア(Thomas Pavier)という人物と手を組み、外典とされる作品を含む四つ折版のシェイクスピア作品集も出版している。そうした経験から「シェイクスピア」のフォリオが一定の市場価値を持つと判断したウィリアムは、シェイクスピア作品の出版権利を有するすべての同業者達と結社(syndicate)を設立してフォリオを編むという着想に至ったと推定されている。
 すでに活字となって市場に流通している本の場合、その出版権利を有するものが再版を出版する際には、「真正の元原稿」ではなくすでに流通している版をベースに本文を組んでいくのが斯界の慣わしであった。その方が時間もコストもかからない。『ロミオとジュリエット』の場合、第二・四つ折本(Q2, 1599)を出版したニコラス・リング(Nicolas Ling)という人物から出版権利を譲渡され第三・四つ折本(Q3, 1609)を出版した人物(問題76で問うので名を伏せておく)が「結社」の一員となったことで、フォリオには第三・フォリオが使われている(Q3はQ2を底本としている)。
 参考までに、市民革命(ピューリタン革命)までの『ロミオとジュリエット』の本文系譜は次のようになっている。
   Q1 (1597)
   Q2 (1599) Q1 より大幅改訂
Q3 (1609) Q2 が底本
   Q4 (1622?) Q3が底本、一部Q1を使用
   F1 (1623) Q3 が底本
   F2 (1632) F1 が底本  *F2 は、F1の再版(第二・フォリオ)。
   Q5(1637) Q4 が底本

戻る 次へ