《第71問》
ロミオがマンチュアで毒薬を買うとき、薬売りに支払うお金を彼は何と呼んでいるか。
正解
不正解
- treasure
- trash
- poison
- treasure
- trash
- poison
- 解説
-
マンチュアの法律に違反して毒薬を売る薬売りに、ロミオは次のように言っている。(第五幕第一場五九行目の台詞から、ここでロミオは "forty ducats" の金を薬売りに手渡していると思われる。)
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There is thy gold, worse poison to men's souls,
Doing more murder in this loathsome world,
Than these poor compounds that thou mayst not sell.
I sell thee poison, thou hast sold me none. (5.1.80-83)
訳)
さあ、金だ、人の心にとっては何よりの猛毒。
厭(いと)わしいこの世では、貴様が売りしぶるケチな毒薬より
遥かに多くの殺人を犯す。
毒を売るのは俺だ、貴様ではない。
『ロミオとジュリエット』のヴェローナは、資本主義を基盤とする社会として描かれているが、芝居は、終盤に入ると、この事実に対して批判的な観客反応を要求してくる。第五幕第一場のこのシーンでは、「マントゥヴァの法律では売ったものは死刑」と定められている毒とあらゆる価値の目安となる貨幣の交換が成立するとき、象徴的な意味において「毒」と「金」は互換可能となり、資本主義が社会に毒を流通させる仕組みとして表象されることになる。ここには、後の『ベニスの商人』や『アテネのタイモン』にも通底する、資本主義に対する劇作家の極めて冷淡な考え方が示されているように思われる。
『ロミオとジュリエット』のエンディング・シーンでは、モンダギューが「何よりも崇められるべきもの(There shall no figure at such rate be set)」(3.3.301)として「忠実貞節なジュリエット」の像を建立すると宣言し、キャピュレットが「それに劣らぬロミオの像も妻の像の傍らに立て (As rich shall Romeo's by his lady's lie)」(5.3.303)ると約束して、両家の和解が成立する。資本主義社会を象徴する存在であったモンダギュー、キャピュレッㇳの二人が、「金」ではなく「忠実貞節」であることこそ「何よりも崇められるべきもの」であるという新たな境地に到達したところで、ヴェローナに平和の兆しが見えてくる。ただし、それは「陰鬱なやすらぎ([a] glooming peace)」(3.3.305)としてのみ表象されている。