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すべての問題にチャレンジ!(68/80) | ロミオとジュリエット | リベラルアーツ英語検定クイズ

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《第68問》
 『ロミオとジュリエット』の主な舞台となるヴェローナの人物が登場する芝居はどれか?

正解

不正解

解説

この選択肢の中で、ヴェローナの人物が登場する芝居は、『じゃじゃ馬ならし』である。パデゥア(パドヴァ)のバブティスタ・ミノーラの長女でじゃじゃ馬のケイトを口説いて結婚する、ヴェローナの貴族ペトルーキオがその人物である。
 『ヴェローナの二紳士』と同様、この芝居は、若き日のシェイクスピア(もしくはその観客)が、ヴェローナという土地やそこに棲む人々に対してどのような印象を抱いていたのかを知る手がかりとなる芝居である。『じゃじゃ馬ならし』は、ペトルーキオの行動や人物像を通して、そして、ペトルーキオが訪れるパデュアとの対比を通して、ヴェローナという土地について観客に一定の印象を与える芝居である。

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第一幕第二場で、ペトルーキオは、彼がパデユアへやってきた理由を、

  Such wind as scatters young men through the world
  To seek their fortunes farther than at home,
  Where small experience grows. (Shr.,1.2.47-49)

 拙訳)経験が積めない田舎にいるより
  もっとでかい財産を手に入れようとする若者を
  世界中にまき散らす風

に吹かれたから、と説明している。ペトルーキオには金もあり、故郷のヴェローナには父の遺産もあるというが、広い世界に出て、「妻を娶ることで、俺がなれるだけの大金持ちになる」('wive and thrive as best I may')(1.2.53)という目的を果たしたいというのである。ペトルーキオの召使いグルーミオもまた、「金さえあれば、何もほしいものはなし」('nothing comes amiss so money comes withal')(1.2.78)という考えの持ち主である。つまり、この芝居におけるヴェローナ人の思考モードは、極端な資本至上主義に基づいていると読める。
 一方、ホーテンショーやグレミオなどに代表されるパデュアの紳士達は、ミノーラ家の莫大な富よりも、ミノーラ家の次女ビアンカに象徴される(少なくとも見せかけの)淑女的礼節を好む傾向を強く示す。ホーテンショーは(少なくとも見せかけの「じゃじゃ馬」)ケイトについて、「金山を丸ごと一つやるといわれても、結婚する気にはれない」('I would not wed her for a mine of gold')(1.2.88)と明言しているが、このパデュア人の考え方は、「君には金の価値が分かっていない」(Thou know'st not gold's effect')(1.2.89)というペトルーキオの考えと対比されている。このように『じゃじゃ馬ならし』という芝居は、(ガリレオ・ガリレイ[Galileo Galilei, 1564-1642]の大学がその象徴ともなっていた)パデュアという近代化された土地との比較によって、ヴェローナを、淑女的礼節や学問などよりも財力こそ最も重要と考える人々が棲む西洋近代の辺境として表象している。
 『ロミオとジュリエット』のヴェローナもまた、ペトルーキオ的価値観の根強く残る社会として描かれている。富豪が権力を有し、貴族も商人富豪との縁組みを通して権勢を維持しようとする、そうした社会が、『ロミオとジュリエット』のヴェローナである。

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