《第40問》
次の映像作品のうち、エンディング・シーンで、ジュリエットが目を覚ました後にロミオが死んでゆくのはどれか？
正解
不正解
- フランコ・ゼフィレーリ監督『ロミオとジュリエット』（1968年）
- アルヴィン・ラコフ監督『BBC版ロミオとジュリエット』（1978年）
- バズ・ラーマン監督『ロミオ＋ジュリエット』（1997年）
- フランコ・ゼフィレーリ監督『ロミオとジュリエット』（1968年）
- アルヴィン・ラコフ監督『BBC版ロミオとジュリエット』（1978年）
- バズ・ラーマン監督『ロミオ＋ジュリエット』（1997年）
- 解説
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ラーマンの映画では、レオナルド・デカプリオ（Leonardo DiCaprio，1974 - ）の演じるロミオが毒薬を飲んだ後、その薬がまだ回らないうちにクレア・デインズ（Claire Danes，1979 - ）の演じるジュリエットが目を覚ます。その結果、ロミオは、言葉にならない別れの言葉を目で発しながら、無念のうちに死んでゆく。このような「改変」は、一部のシェイクスピア信奉者には、原作からの「逸脱」と映るかもしれない。
より詳しい解説を読むしかし、『ロミオとジュリエット』の上演史を振り返ってみると、十八世紀中葉頃には、同様の演出がしばしばなされていて、名優ディヴィッド・ギャリック（David Garrick，1717-79）がロミオを演じ長らく舞台を風靡した芝居でも、この場面は同じように演じられた。ヴィクトリア＆アルバート博物館が所蔵するベンジャミン・ウィルソンの絵画（c.1753）に、ギャリックの演じるロミオとベラミー女史（George Anne Bellamy，c. 1727-88）の演じるジュリエットが互いに手の平を翳し合いながら、すれ違いの死を遂げる場面が描かれている。
もとを辿れば、こうした演出はバンデロの原話には忠実である。バンデロを改変したアーサー・ブルックの物語では、ロミオの従者ピーターと僧ロレンスが霊廟でロミオの死体を発見してから「一時間後」にジュリエットが目を覚ます。そして、そのとき、ロミオの身体はすでに冷たくなっている。これに基づくシェイクスピアの作品では、ロミオの唇の熱がまだ冷めないうちに（ジュリエットの台詞に 'Thy lips are warm' [5.3.167]とある）ジュリエットが目を覚ます。つまり、シェイクスピアは、この若い夫婦の悲劇が、あとほんの少しだけ早ければ阻止できたかもしれないことを強調していることがわかる。仮に、シェイクスピアがブルックではなくバンデロを読んでいたとすれば、バンデロの記述に従っていたかもしれない。
ここでいえることは、十八世紀の演出と同様、ラーマンの演出がシェイクスピアの原作を「逸脱」しているとは必ずしも断定できないということだ。むしろ、ラーマンは、原作に秘められた意図を汲もうとする伝統的な演出方法に立ち返ろうとしているのである。