《第29問》
僧ロレンスの属する修道会の創始者は誰か?
正解
不正解
- フランチェスコ
- ルター
- パウロ
- フランチェスコ
- ルター
- パウロ
- 解説
-
第五幕第二場の冒頭で、僧ジョンがロレンスを「フランシスコ会のロレンス様」と呼んでいることから、僧ロレンスはフランシスコ会の修道士であることが分かる。また、第二幕第三場で ‘Holy Saint Francis’ (2.3.65)、第五幕第三場で ‘Saint Francis be my speed!’ (5.3.121) と、シェイクスピアはロレンスに言わせている。
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フランシスコ会の創始者アッシジのフランチェスコ(St. Francis of Assisi, 1181/2‐1226)は、労働は経済活動ではなく純粋に奉仕であり、生活は恵みによるものという思想を確立した人物で、奉仕と托鉢の生活に従事した。一枚の布を身体に纏い縄を帯とするだけの格好で説教したことから、この格好がフランシスコ会修道士の制服となった。(おそらく、シェイクスピアの舞台でもロレンスはそのような格好で登場したであろう。)『キリスト教大事典 改定新版』(教文館, 1985)によると、この修道会は、「瞑想による神との交わりを重んずるとともに、清貧・貞潔・服従の契約を守り、1か所に定住せず、福音を伝え、人のいやがることに進んで奉仕をし、托鉢によって生活を支える新しい型の修道会」である。1257年にフランシスコ会修道長に任ぜられたボナベンテゥラ(Bonaventura, 1221‐74)が、『精神の神への道』(Itinerarium mentis in Deum, 1472) や『神学網要』(Breviloquium, 1472)などの著作によって、フランシスコ会の基礎を確立したとされる。
『ロミオとジュリエット』の描く資本原理主義が蔓延るヴェローナの社会において、フランシスコ会の僧ロレンスは異彩を放つ存在として表象される。キャピュレット家恒例の貴族や貴婦人達を招いての華麗な晩餐会のシーンが終わり、それに続く荘厳なキャピュレットの屋敷を背景とするバルコニー・シーン(この場面をどう表象するかは演出家の裁量に委ねられるが)の直後、第二幕第三場にロレンスは清貧な身なりで登場し、瞑想的な独白を語る。観客は、この劇がそれまで描出してきたものとは際立って異質の時空がそこに存在していることを感じ取ることになる。