《第6問》
fowlの原義はなんでしょうか。
正解
不正解
- 豚
- 馬
- 鳥
- 豚
- 馬
- 鳥
- 解説
-
古くは fowl= a bird として使われています。
より詳しい解説を読む例/Gewat þa ofer wægholm winde gefysed / flota famiheals fugle gelicost ((c900)Beowulf 217-218) (=Then went over the ocean, urged on by the wind, the foamy-necked vessel, most like a bird)「それから波立つ海原を進んだ、風にあおられて泡立つへさきを持つ舟は、まるで鳥のように」/Foxas habba holu and heofenan fuglas nest ((c1000) The Old English Version of the Gospels Matthew 8.20) (=The foxes have holes, and the birds of the air have nests)「狐には穴があり、空の鳥には巣がある」/チョーサーではbird (綴りはすべてbrid)が62例、fowl (綴りはfoul, foughle, fowel, fowles, foulesなど)が49例使われています。/That is to seyn, the foules of ravine / Weere hyest set, and thane the foules smale ((c1381) Chaucer The Parliament of Fowls 323-324) (=That is to say, the birds of prey were in the highest place, and then the small birds came)「すなわち、猛禽類が一番高いところに座を占め、ついで、小鳥たちが来た」/On every bow the bryddes herde I synge, / With voys of aungel in here armonye; / Some besyede hem here bryddes forth to brynge; (Chaucer The Parliament of Fowls 190-192)(=On every bough I heard the birds sing in harmony with voices of an angel. Besides some birds here brought up their young birds)「枝という枝の上には小鳥たちが天使の声に合わせてさえずるのを聞いた。また、雛を育てている鳥たちもいた」/以上の例で明らかなように、チョーサーの場合、birdも fowlも「鳥」の意味であり、鶏などの家禽を表している例は見当たりません。/The Parliament of Fowls 323-324(この詩のタイトルも「鳥の議会」の意味)に挙げた「猛禽類」という日本語訳も bird of prey 「肉食性の鳥」の意味で、of preyという語句があるために「猛禽類」となっているのであり、鷲や鷹などの大きな鳥のことと考えられます。つまり、チョーサーでは birdも fowlも「鳥」の意味で今日の鶏などの家禽の意味はないということです。/シェイクスピアでは bird (綴りもすべてbird)が102例、fowlが19例見られます。シェイクスピアの場合も、birdも fowlも「鳥」の意味で使われており、明確に「鶏」などの家禽と断定できる例は見当たりません。が、文脈から現代の「鳥」ではなく「鶏」などの食用の鳥を表している推測できる例があります。/fowl = bird/ O ay, stalk on, stalk on, the fowl sits. ((c1599) Shakespeare Much Ado about Nothing 2.3.92)「そっと、そっと、例の鳥がとまっています」/この例では木などにとまっている「鳥」ですから、birdと同じと考えられます。しかし、次の例では「料理用に」とありますから、「鳥」といっても「鶏」などの家禽でろうと考えられます。/He’s not prepar’d for death. / Even for our kitchens / We kill the fowl of season. (Shakespeare Measure for Measure 2.2.84-85) 「彼はまだ死ぬ覚悟ができておりません。料理用に鳥を絞めるにも季節というものがあります」/次の例では「鷹が鳥におそいかかる」のですが、その鳥はbirdとも今日の fowl「鶏」とも解釈できます。/This outward-sainted deputy, / Whose settled visage and deliberate word / Nips youth i’ th’ head、and follies doth [enew] / As falcon doth the fowl, is yet a devil; (Shakespeare Measure for Measure 3.1.88-91)「聖人ぶっていかめしい顔をし、もっともらしいことばで若者を頭ごなしにしかりつけ、鷹が鳥におそいかかるように、不品行に襲いかかるけど、あの人は実は悪魔よ」/次の例では、「羽のない鶴」(a crow without feather)という語句から考えると、ここでの fowl は birdと同義の「鳥」と解釈できます。/S.Dro. Ay, when fowls have no feathers, and fish have no fin.・・・・・E.Dro. A crow without feather? Master, mean you so? / For a fish without a fin, there’s a fowl without a feather: (Shakespeare The Comedy of Errors 3.1.79-82)「ドローミオ弟 そんなら羽のない鳥か鰭のない魚をもってきな。」 ・・・・・「ドローミオ兄 羽のない鶴ですね。やい、鰭のない魚はともかく、羽のない鳥はみつけたぞ」/fowlが家禽の意味で用いられるのは次の例が最初です。/fowl= a domestic cock or hen/ As folkes keep foul when they are not fat enough for their eating ((c1580) Sidney Arcadia 3.311)「食べても十分に太らない場合、人々は鶏を飼っているので」/家禽つまり鶏の意味では上記の例が最初ですが、1611年の欽定訳聖書では birdもfowlも「鳥」の意味で使われています。/They, and every beast after his kind, and all the cattle after their kind, and every creeping thing that creepeth upon the earth after his kind, and every fowl after his kind, every bird of every sort. And they went … into the ark, (The Authorized Version Genesis 7.14-15) 「彼らとともにそれぞれの獣、それぞれの家畜、それぞれの地を這うもの、それぞれの鳥、小鳥のすべて、・・・箱舟に入った」/And God said, Let the waters bring forth abundantly the moving creature that hath life, and fowl that may fly above the earth in the open firmament of heaven. (The Authorized Version Genesis 1.20)「神は言われた。生き物が水の中に群がれ。鳥は地の上、天の大空の面を飛べ。」/Moreover ye shall eat no manner of blood, whether it be of fowl or of beast, in any of your dwellings. (The Authorized Version Leviticus 7.26)「あなたたちがどこに住もうとも、鳥類および動物の血は決して食用に供してはならない」/1611年の「欽定訳聖書」(The Authorized Version)では bird (birds, bird’s, birds’)が54例使われています。一方、 fowl (fowls)は86例見られます。つまり、「鳥」の意味ではまだfowlが多く使われているのです。/bird [OE brid (=young bird)]もfowl [OE fugol= something living which flies in the sky]も古英語起源の語であり、ともに「空を飛ぶもの」つまり「鳥」の意味でした。ただし、birdは「小鳥」以外にも ‘young beast, child, maiden, girl’などの意味でも用いられていました。欽定訳聖書の事実からみると、17世紀の初めまでは fowl もまだ「鳥」の意味で使われていたことになります。1580年ころ Sidney によって「家禽」の意味で初めて使われるようになり、またシェイクスピアでも文脈によっては「鶏」などの意味に解される使われ方がされ、徐々に fowl の意味が狭まり、一方で bird が「ひなの鳥」ばかりではなく「鳥」一般を表すようになりました。/ ところで、bird は最初は bridと綴られていました。これがなぜ bird になったのでしょう。この brid がbird になるのは15世紀からですが、このような綴り字変化を字位転換(metathesis[mətǽθəsis])または brid [ brid] → bird [bə׃d]となりますから音位転換ともいいます。ax [ǽks] → ask[ɑ׃sk] や clapse [klǽps] → clasp[klǽsp](留め金)も同じ現象です。このようなことは日本語でもみられます。例えば、山茶花は「さんさか」→「さざんか」となっていますから、音位(字位)転換ということになります。