《第42問》
王政復古期から十八世紀にかけて流行した次の芝居のうち、『ロミオとジュリエット』の翻案はどれか?
正解
不正解
- 『ケイウス・マリウス』(初演、1679年)
- 『すべては恋ゆえに』(初演、1677年)
- 『乞食のオペラ 』(初演、1728年)
- 『ケイウス・マリウス』(初演、1679年)
- 『すべては恋ゆえに』(初演、1677年)
- 『乞食のオペラ 』(初演、1728年)
- 解説
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トマス・オットウェイ(Thomas Otway,1652-85)の『ケイウス・マリウス』(The History and Fall of Caius Marius, 初演、1679年)は、王政復古期の舞台で人気を博した『ロミオとジュリエット』の翻案劇。舞台をローマの共和政体下に設定し、そこにシェイクスピアの芝居を重ね合わせることで、貴族と平民の対立を描きながら、当時のイングランド社会におけるトーリー派閥とホイッグ派閥の闘争をも照射するという巧妙な芝居に仕上がっている。台詞の大半は、シェイクスピアの英語をそのまま使用している。
より詳しい解説を読む王政復古の後、『ロミオとジュリエット』は比較的早い時期にロンドンの劇場で復活の陽の目を見たものの、悲劇的要素と喜劇的要素が複雑に入り混じったこの劇は、当時の民衆の嗜好には合わなかったようである。ちなみに、この時代の『ロミオとジュリエット』の上演記録として残っているものは、サミュエル・ピープス(Samuel Pepys)の残した1662年3月1日付けの日記と、同じ頃ジョン・ダウンズ(John Downs)が記している劇評 ―いずれも酷評― の二つのみであり、その後は1744年までロンドンの商業劇場での上演記録はない。1679年に「改良」されたオットウェイの芝居が成功を収めると、その後六十年以上もの間、観客は、オットウェイの芝居をシェイクスピアの原作以上に愛していた。
オットウェイの芝居では、登場人物の性格にも様々な改変が加えられていて、それが後の時代の人物解釈に少なからず影響を及ぼしていることもある。マキューシオの人物像などは、原作から大きく離れていることで有名である。
選択肢b)『すべては恋ゆえに』(All for Love)はジョン・ドライデン(John Dryden)による『アントニーとクレオパトラ』の翻案劇で、『ケイウス・マリウス』と同様、当時は原作を凌ぐ人気を誇っていた。c)『乞食のオペラ』(The Beggar’s Opera)はロンドンの犯罪世界を舞台とするジョン・ゲイ(John Gay,1685-1723)のミュージカル・コメディーで、ブレヒトの『三文オペラ』(1928)の原作となった作品である。