《第34問》
『ロミオとジュリエット』がシェイクスピアの手になる作品であることを示す最古の文献とされるものはどれか?
正解
不正解
- Ad Gulielmum Shakespeare (1595)
- Q1 Romeo and Juliet (1597)
- Palladis Tamia: Wits Treasury (1598)
- Ad Gulielmum Shakespeare (1595)
- Q1 Romeo and Juliet (1597)
- Palladis Tamia: Wits Treasury (1598)
- 解説
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シェイクスピアの生前に出版された四つ折本の表題紙からは、いずれもそれがシェイクスピアの手になる作品であることはわからない。『ロミオとジュリエット」がシェイクスピアの名で出版されるのは、彼が没してから数年が経過してからであった。シェイクスピアの生前に書かれ、シェイクスピアと『ロミオとジュリエット』を結びつける有力な証拠文献で最も古いと推定されるものは、ジョン・ウィーヴァー(John Weever, 1576-1632)の詩集(1599年に出版)に収められた「ウィリアム・シェイクスピアへ」(Ad Gulielmum Shakespeare)という一篇の詩である。この詩が書かれたのは、1595年と推定されている。
より詳しい解説を読む蜜のような言葉を持つシェイクスピアよ。君の作品をみると、
それを創造したのはアポロに他ならないのではないか、と私は思う。
という書き出しで始まるその詩に、
ロミオ、リチャード、そして、名は知らないが他にもいる。
彼らは、甘美な言葉と、権力を惹きつけるその美しさで
聖人であるかの如く思わせるが、そうではないことが判明する。
(原文) Romea-Richard; more whose names I know not,
Their sugred tongues, and power attractive beuty
Say they are Saints, althogh that Sts they shew not[.]
(Shakespeare’s Centurie of Prayse, London, 1874, 23)
という一節が見える。原文の ‘Romea’ は ‘Romeo’と解釈されている。
フランシス・ミアズ(Francis Meres, 1565-1647)の書いた『知恵の宝庫』(Palladis Tamia: Wits Treasury, 1598)は、シェイクスピア作品への言及を含む初期の文献として有名である。「イングランドの詩人達とギリシャ、ローマ、及びイタリアの詩人達の比較的考察」と銘打たれた章に、シェイクスピアの詩への賛辞文があり、そのくだりに次のような一節が見える。
「ローマの詩人ではプラウトゥスとセネカが、それぞれ喜劇と悲劇において最も優れた作者に数えられるが、イングランドではシェイクスピアが、喜劇・悲劇の両方において最も優れている。<中略> 悲劇では、『リチャード二世』、『リチャード三世』、『ヘンリー四世』、『タイタス・アンドロニカス』、そして『ロミオとジュリエット』をご覧あれ。」
この一節も、シェイクスピアと『ロミオとジュリエット』を結びつける重要な文献の一つに数えられている。『知恵の宝庫』のこの章は、1596年頃に書かれたと推定されている。つまり、ウィーヴァーの詩の方が少し古い。
なお、この二つの文献には、シェイクスピアの詩を賛美する言葉として同じ英語(honey-tonguedやsugred [= sugared] といった形容詞)が使用されていることがしばしば指摘される。