《第27問》
『ロミオとジュリエット』で言及され、『夏の夜の夢』第五幕第一場の劇中劇に登場する悲劇的ヒロインは誰か?
正解
不正解
- シスビー
- ヒーロー
- クレオパトラ
- シスビー
- ヒーロー
- クレオパトラ
- 解説
-
『夏の夜の夢』第五幕第一場の劇中劇に登場する悲劇的ヒロインは、マキューシオが最後に言及しているシスビーである。バビロンのピラマスとの恋に落ちたシスビーは、ある夜、彼女がライオンに食べられたと誤解して自刃したピラマスを追って自分も自殺する。
より詳しい解説を読む弟二幕第四場のマキューシオの次の台詞に何人かの神話的人物について短い言及がある。
「ダイドーは大道芸人、クレオパトラは黒色のジプシー、ヘレンとヒーローはでれんとした淫売女、シスビーは青い目しか取り得のないくずだ。」
ダイドーは、カルタゴの女王。トロイが崩落した後、ローマへと向うアエネーイスに恋をするが、棄てられて焼身自殺するヒロイン。クレオパトラはエジプトの女王で、ジュリアス・シーザーの妻。後にマーク・アントニーの愛人となり、アクティウムの海戦にてアントニーがオクタヴィウス・シーザーに敗れると、その後を追って自殺した。ヘレンはトロイのパリスに誘拐されたメネラウスの妻。この誘拐が発端となって起こったトロイ戦争のヒロイン。ヒーローはヴィーナスに仕えた巫女。嵐の夜に溺死した恋人リアンダーを追って投身自殺したヒロイン。これらの神話的人物に纏わる物語をシェイクスピアやマーローは詩や芝居の題材としているが、『夏の夜の夢』第五幕第一場の劇中劇には登場させていない。そこに登場する悲劇的ヒロインは、マキューシオが最後に言及しているシスビーである。バビロンのピラマスとの恋に落ちたシスビーは、ある夜、彼女がライオンに食べられたと誤解して自刃したピラマスを追って自分も自殺する。『夏の夜の夢』の劇中劇では、この物語が、ボトムらの一行によって滑稽に演じられる。
『ロミオとジュリエット』や『夏の夜の夢』を書いていた頃、シェイクスピアの意識下には上述の様々な悲劇的恋物語があり、それらが共通して描いている ‘death-marked love’ (Prologue, 9) というテーマについてシェイクスピアは思いを巡らせていたのであろう。