《第39問》
『充たされざる者』のホテルの支配人ホフマンの妻が好きだった詩人は?
正解
不正解
- ワーズワース
- リルケ
- ボードレール
- ワーズワース
- リルケ
- ボードレール
- 解説
-
ホフマンはライダーが宿泊しているホテルの支配人であり、「木曜の夕べ」を企画する中心人物でもある。彼はライダーに、妻のクリスティーネがライダーのファンであることを伝え、彼女が彼の記事を集めたアルバムを作っているので機会があれば見て欲しいと懇願しさえする。一見すると妻を気づかっているようであるが、実際は二人の関係はうまくいっていない。クリスティーネがボードレールの詩が好きであることが判明するのは、彼女がある音楽家と話した時である。ホフマンは音楽家からそのことを聞き、「家内はそんな情熱を、わたしにはかけらも見せなかった!」 (351)と衝撃を受ける。
些細な場面であるが、『充たされざる者』の主要テーマでもある、人物間のコミュニケーション不全を典型的に表わすエピソードである。そもそもこの二人が付き合うことになったのは、クリスティーネがホフマンのことを作曲家だと誤解したことから始まっており、ホフマンも彼女を失いたくないあまり長年に渡ってごまかし続けていた。その結果、このエピソードに顕著に示されるように、彼女はホフマンから「隠している一面」(351)を持っていることが明らかになる。
本作では他にも身近な他者との関係を自力では回復できないほどにこじれさせてしまった人物が登場するが、実はライダー自身もそのような問題を抱えていることが次第に明らかになる。そして「木曜の夕べ」はそのようなこじれた関係を劇的に修復する機会として期待されているのである。