《第37問》
『日の名残り』においてハリファックス卿と駐英大使リッベントロップとの会談が成功した一つの要因としてスティーブンスが自負しているのは次のうちのどれか。
正解
不正解
- 屋敷内の銀器が完璧に磨きあげられていることにハリファックス卿が感心したから
- スティーブンスの見事な接客にハリファックス卿が感銘を受けたから
- スティーブンスがハリファックス卿の難しいクイズに答えられたから
- 屋敷内の銀器が完璧に磨きあげられていることにハリファックス卿が感心したから
- スティーブンスの見事な接客にハリファックス卿が感銘を受けたから
- スティーブンスがハリファックス卿の難しいクイズに答えられたから
- 解説
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偉大な執事という自己像はじつはダーリントン卿がユダヤ人メイドを解雇する前にすでに瓦解し始めていた。スティーブンス自身が、自ら定めた偉大な執事の定義に抵触する行為に走り、しかもその行為を誇りにしていたからである。それはハリファックス卿がダーリントン・ホールを訪ねたときのエピソードである。第一次世界大戦後に戦勝国によってドイツに課せられた賠償金を軽減できるよう国際情勢を誘導するためにダーリントン卿はハリファックス卿を屋敷に招き、駐英ドイツ大使だったリッベントロップとの会談を設けた。当初ハリファックス卿は会談に消極的だったが、ダーリントン卿の後日談で、屋敷内の銀器が磨き上げられていたことにハリファックス卿が大いに感心し気分が一転した、とスティーブンスは聞かされる。そこでスティーブンスはハリファックス卿と大使の関係の好転に屋敷内の銀器が貢献したと胸を張る(Remains 144)。しかし、この会談の成功によってダーリントン卿がその後ドイツのファシズムに巻き込まれていくことになったことを顧みれば、スティーブンスの仕事は結果的に卿の政治的運命を間違った方向に差し向ける要因になったともいえる。しかしそのことにスティーブンスは気づいていない。それどころか意気揚々としている(143, 147)。つまりこの時点ですでに偉大な執事という彼の自己像は足元から崩れ始めていたのである。