《第33問》
『わたしたちが孤児だったころ』は、長編としてイシグロの何作目の作品に当たるか。
正解
不正解
- 4作目
- 5作目
- 6作目
- 4作目
- 5作目
- 6作目
- 解説
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2000年に出版されたこの作品は、イシグロの5作目の長編である。1989年に第3作『日の名残り』を発表して、イギリス文壇最高の栄誉とされるブッカー賞を受賞したイシグロは、1995年に『充たされざる者』を出版している。その5年後に出されたのが本作であり、さらにその5年後に第6作目の『わたしを離さないで』が世に出た。
このようにほぼ5年ごとに作品を発表するという、かなり寡作というべきイシグロであるが、その評価は高い。第1作目の『遠い山なみの光』(1982)で王立文学協会賞、2作目の『浮世の画家』(1986)でウィットブレッド賞を受賞したイシグロは、先述した通り、第3作目で英国文壇最高の栄誉に浴する。
続く第4作『充たされざる者』はかなり毀誉褒貶半ばする作品であったが、それでもチェルトナム文学賞に輝き、『オブザーバー』紙は過去25年に発表された作品の中で、第3位にこの小説を選んでいる。『わたしたちが孤児だったころ』も、残念ながら2度目の受賞は逃したものの、ブッカー賞に再びノミネートされた。
第6作目の『わたしを離さないで』が前作に引続きブッカー賞の最終候補に残り、ドイツやイタリアでも大きな文学賞を受賞した。近年はノーベル賞の候補にも挙がっており、その声価はますます高まるばかりである。こちらはイシグロだけの功績ではないが、『日の名残り』や『わたしを離さないで』の映画版も高い評価を得ている。
最新作の『忘れられた巨人』(2015)では、中世のイギリスを舞台として、民族の記憶や平和、軋轢といった、普遍的でありながら、きわめて現代的でもあるデリケートなテーマに取り組んでいる。その数は決して多くはないけれども、これら評価の高い作品を発表し続けるイシグロが、人気・実力とも兼ね備えた有力な現代作家の一人であることは間違いない。