《第20問》
『充たされざる者』で町の人々が「彼の銅像を立てよう」と盛り上がったブルーノとは何者?
正解
不正解
- 音楽家
- 犬
- ポーター
- 音楽家
- 犬
- ポーター
- 解説
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老指揮者ブロツキーはブルーノという名の雄犬を長いこと飼っていたが、つい最近ブルーノが死んでしまったという知らせが町に広まる(P118)。「木曜の夕べ」の成功を祈念する人びとはブロツキーの心中を察して、彼がこの突発的な事件による悲しみのため演奏会に参加できなくなるのではないかと案じる。4
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*括弧内の数字はページを表す。ブルーノの死は不安に駆られた人びとの間で話題となり、さまざまな噂と憶測を引き起こしながら広まってゆく。それはブロツキー本人が現れたときにさらに過熱し、人びとはこぞって彼にお悔やみを述べ、「銅像を建てよう」(P142)「町の通りに名前をつけよう」(P143)と提案する*1。ただ一匹の犬の死への対処が、「木曜の夕べ」という公的なプロジェクトの成功の鍵を握る重要事であるかのように取り上げられる様子が滑稽に描き出されている*2。だがブロツキー自身は「あの犬が私にとってそれほど重要だと思っているのかね。彼は死んだ、ただそれだけだ」と言い、そうした喧噪からは距離を置いている。そして「盛大な葬式。銅像。そんなものは必要ない。・・・私だけで彼を静かに埋葬する」(P329)と述べ、彼がブルーノの遺体を埋めている間に「最高の音楽」をブルーノに聴かせてやりたいと、ライダーにピアノ演奏を依頼する。
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*1このような過剰反応に「あの犬は今まで町の厄介者だったではないか」(P143)と反対の声をあげるものもいるが多数派の中でかき消されてゆく
*2この様子を「現代のセレブリティ文化において有名人の伝説がおかしな形式で作り上げられる様子を風刺したもの」と見る論者もいる(Sim, Wai-chew. Kazuo Ishiguro. New York and London: Routledge, 2009. 59.)