《第15問》
『日の名残り』の中盤でスティーブンスは偉大な執事の定義を修正し、「品格」の他にもう一つ要件を挙げている。それは次のうちのどれか?
正解
不正解
- 名家で長年雇われ、接客の場で博識を披露できること
- 執事職に誇りを持ち、かつ必要とあれば雇主に進言できること
- 徳の高い偉大な紳士に仕え、それによって人類に貢献できること
- 名家で長年雇われ、接客の場で博識を披露できること
- 執事職に誇りを持ち、かつ必要とあれば雇主に進言できること
- 徳の高い偉大な紳士に仕え、それによって人類に貢献できること
- 解説
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スティーブンスが若かりし頃にさまざまな屋敷を転々としたことは先の解説で触れた。転々としたのはスティーブンスの考える偉大な執事の条件が満たされなかったからである。では偉大な執事とはなにか。スティーブンスはこう断言する。「長年にわたる執事としての仕事をふりかえり、自らの才能を一人の偉大な紳士に仕えることに捧げ、さらにその主人を通して人類への奉仕に捧げてきた――そう言える者こそ『偉大な』執事である」(P123)。一方、偉大な「紳士」とは、スティーブンスによれば、徳の高い人であり、国際政治の重要事項を実質的に決定する権限をもつ人のことである。スティーブンスの世代で野心的な執事は、そうした偉大な紳士の住む屋敷で働こうとした。したがって、スティーブンスがダーリントン卿への奉仕に自らの才能を捧げようと決意したのは、スティーブンスの目に卿が「道徳意識が稀に見るほど高い紳士(a gentleman of great moral stature)」(P132)と映ったからであり、卿が偉大な紳士の一人だと彼が判断したからである。言い換えれば、スティーブンスにとって、自身の執事としての偉大さを保証してくれる人物こそダーリントン卿だったというわけである。
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