《第12問》
「日の名残り」でスティーブンスは偉大な執事の条件の一つに品格を挙げ、執事としてのプロ意識こそが品格を形成すると述べている。ではこのプロ意識をスティーブンスは何に喩えているか?
正解
不正解
- スーツ
- 仮面
- 植物
- スーツ
- 仮面
- 植物
- 解説
-
品格に最初に触れたのは、一流の執事だけが入会を許されたヘイズ協会である。ヘイズ協会はすでに何年も前に解散しているが、かつては絶大なる影響力を誇った団体であった。入会条件を明示してほしいという投書が『紳士の鑑』という季刊誌に多く寄せられたことを受け、協会は同誌に「名家に雇われていること」を挙げた。しかし、この入会条件が論争を招き、読者と協会との間で誌面上での応酬があり、最終的に協会は入会に不可欠な条件を「執事にふさわしい品格を具えていること」と再定義した。この品格をスティーブンスは自己流に解釈する。スティーブンスによれば、品格とは「執事として身につけたプロ意識を放棄しない能力(a butler’s ability not to abandon the professional being he inhabits)」(P43)である。 「上品な紳士がスーツを着るものと決まっているように、偉大な執事はプロ意識という名のスーツを身にまとう(They wear their professionalism as a decent gentleman will wear his suit)」(P44)。プロ意識という名のスーツを脱ぐのは一人だけのときに限られる。スティーブンスはそのような品格を体現する人物の一人として自らの父親を挙げ、父親にまつわるエピソードを語っている。
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(1)引用はKazuo Ishiguro, The Remains of the Day, 1989, London: Faber, 1990による。以下、括弧内の数字はページを表す。