《第38問》
It’s me. と I ではなく me が使われているのはなぜでしょうか。
正解
不正解
- 自分を強調するため
- 英語の語順の基本はSVOであるため
- 発音を間違えたため
- 自分を強調するため
- 英語の語順の基本はSVOであるため
- 発音を間違えたため
- 解説
-
It’s me. は次のような変化をしています。
より詳しい解説を読む
古英語 ic hit eom (= I it am)
14世紀 ic am I
15世紀 it is I
16世紀 it is me
17世紀 it's me
古英語におけるbe(OE beon)動詞の変化は次のようになっています。
単数 複数
1人称 eom earon
2人称 eart earon
3人称 is earon
古英語における人称代名詞 I(OE ic)とit(OE hit)は次のように変化しています。
主格 ic hit
属格 min his
与格 me him
対格 me hit
古英語では ic [イッチ] と hit [ヒット] が動詞 eom [エオム] の前に置かれています。eomは現在の動詞 am の古英語の形(1人称・現在・単数)なので、ic が主語であることは明らかです。Hit は現在の代名詞 it の古英語の形です。14世紀になると it は動詞の前に、I は動詞の後ろに位置するようになりますが(icから I になる変化については第5問の解説を参照。hit が it になるのは強強勢が I に置かれていることと、h 音は声門子音でほとんど聞き取れない音なので消滅したことによります。詳しくは第23問の解説を参照)、動詞の形は am ですから、主語は依然として I です。15世紀になると動詞の形が am から is に変わっています。これによって主語が I から it になったことが明らかです。16世紀には I が me に変化しています。15世紀に it が主語になったのは動詞の前の領域は「主語の領域」と解されたためです。また、16世紀に I が 目的格の me に変化したのは動詞の後ろは「目的語の領域」とされたためです。be動詞は自動詞でありながらなぜ「目的語の領域」と解釈されているのでしょうか? 古英語ではドイツ語のように語尾屈折が大きな役割をしていました。例えば、Sie liebt ihn.(OE Heo lufeþ hine.〈= She loves him.〉)のように。ところが初期中英語になると語尾変化はほとんどなくなり、文法関係や意味は語順が決定するようになりました。この結果、英語の基本的な語順はSVOとなり、動詞が自動詞であっても「動詞の後ろには目的語」という考えが支配的となりました。従って、It is me. はS V Oの構造と理解されて I が me と変化したのです。動詞を中心として前の位置が主語、後ろの位置が目的語とすることを「位置の圧力」(position pressure)と言います。現在のような縮約形It’s me. は17世紀になってからのことです。
I が me になったもう一つの可能性は It is we. / It is he. / It is she.では強く発音されてwe [ wi꞉ ]、he [ hi꞉ ]、she [ ʃi꞉ ] となるので、I が me [ mi꞉ ] になったという解釈がされている場合もあります。また、ここでの we、he、she は強く発音されて十分目立っていますから、「位置の圧力」を受けることなく主格が使われています。