リベラルアーツ英語検定クイズカズオ・イシグロ > 2016年02月11日更新分(1/1)

《第2問》
小説『わたしを離さないで』の主人公である、キャシー(Kathy H.)が子ども時代を過ごした施設の名前で正しいものは次のうちのどれか?

正解

不正解

解説

イシグロの第6長編『わたしを離さないで』(Never Let Me Go(1)) は、2005年に発売された。科学による進歩が人間に与えた「生」や「種」に対する非道徳的な欲深さ等に光があてられている。1996年にイギリスでクローン羊のドリーが誕生していることから、人間のクローンを主人公に据えるのは、読者にとっても想像することは容易であったといえる(2) 。舞台設定も近未来や遠い未来の話ではなく、1990年代後期のイギリスである。『わたしを離さないで』は、全世界でミリオン・セラーとなり映画化や舞台化もされた。2016年1月には、綾瀬はるか、三浦春馬、水川あさみ等の主演でドラマ化もされている。

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(1)テクストはKazuo Ishiguro, Never Let Me Go, London: Faber, 2005。
(2)イシグロは、「人間すべてに共通する状況下にクローン人間を描くことで、自分と異なる人たちの話だと思って読むうち、これは自分自身にあてはまる話なんだと気づいてほしかった」と言っている(読売新聞、2006年6月12日)。

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主人公のキャシーは子ども時代をクローン達にとって学校と寄宿舎としての機能を有するヘールシャム(Hailsham)という施設で過ごしている。ヘールシャムは、くぼ地に建てられており(3)、その周囲を森や花畑が囲んでいる。生徒たちが校舎の窓から、高地から低地へと降りてくるトラックなどを見る様子も描かれている。一見するとヘールシャムは、ユートピアをイメージさせる。しかし、施設を抜け出して森に入った子どもが手足を切断された状態で木に吊るされていたという話やフェンスを越えた少女が中に入れてもらえず亡くなり、幽霊となって森を彷徨っているという話が生徒の間で噂が流布しており、闇を抱えていることが暗に示される。

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(3)“Hailsham stood in a smooth hollow with fields rising on all sides” (34)。

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