《第1問》
次の作品の中で、イシグロの出身地である長崎の風景が描かれている作品はどれか?
正解
不正解
- 『遠い山なみの光』
- 『わたしたちが孤児だったころ』
- 『わたしを離さないで』
- 『遠い山なみの光』
- 『わたしたちが孤児だったころ』
- 『わたしを離さないで』
- 解説
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『遠い山なみの光』(A Pale View of Hills)は、現在イギリスに住む日本人移民女性エツコ・シェリンガムが、その若き日々をすごしていた終戦後の長崎の記憶の断章を紡いでゆく一人称の語りが中心となる小説である。エツコの記憶によみがえる長崎は、1950 年代の初期、原爆投下によって焦土となり敗戦国となったどん底の日々から復興を遂げ、近代化/西洋化へ向けて変貌と発展を遂げようとしている都市として描かれている。
戦争の深い傷痕が残るその時空に、近代的な集合住宅の建設が進んでいて、エツコは当時、最初の夫であるオガタ・ジロウと そこで暮らしていた。 エツコの住んでいたその住宅の部屋からは、焦土と、それをかたづける重機、そして原爆で焼け残った古い家がすぐ下に見え、遠く向こうには外国へとつながる湾と山なみの風景が見えていて、エツコの記憶では、そこは、過去の時代として葬られようとしている戦前の日本へのノスタルジーと、敗戦後の社会変化がもたらす未知の時代への希望との間に位置するアンビヴァレントな時空として表象されている。