《第69問》
シェイクスピアの『オセロー』のテクストにも、ヴェローナに由来するあるものへの言及がなされているが、それは何か?
正解
不正解
- オセローがデスデモーナに与えたハンカチ
- イアーゴーの名前
- オセローの副官キャッシオーをキプロス島へと運んだ船
- オセローがデスデモーナに与えたハンカチ
- イアーゴーの名前
- オセローの副官キャッシオーをキプロス島へと運んだ船
- 解説
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『オセロー』の第二幕第一場で、オセローの副官キャッシオーがキプロス島に到着するとき、彼が乗ってくる船の名がヴェローナに由来している。テクストにはこう書かれている。
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THIRD GENTLEMAN The ship is here put in,
A Veronesa. Michael Cassio,
Lieutenant to the warlike Moor Othello… (Oth., 2.1.26-28)
拙訳)
第三の紳士 ヴェローナの船が一隻、
港に入りました。マイケル・キャーシオー様という、
勇敢なムーア人閣下オセロー様の副官にございます。
多くの編注者は、ヴェネチアの船がどうして「ヴェローナの船」と呼ばれるのかは謎であるとしつつも、キャッシオーという人物をヴェローナ人の気風と関連付けようとしているのではないかと推測している。第一幕第一場の冒頭ではキャッオーは「フローレンス(フィレンツェ)の男」(a Florentine)とされているが、第二幕第一場でなぜかヴェローナと結びつけられている。キャッシオー(Cassio)という名前が「金」(cash)を連想させるので、ヴェローナがでてきたのかもしれない。あるいは、『オセロー』を書いていた頃のシェイクスピアの想像世界の中では、フローレンスとヴェローナはすでに辺境の地として一緒くたにされていたのかもしれない。いずれにせよ、異文化が共存する近代的都市国家として表象される『オセロー』のヴェネチア領内でキャッシオーの人物像が放つ特異性は、フローレンスとヴェローナという二つの「片田舎」と関連付けられていたと思われる。デスデモーナのハンカチは、断定はできないが、おそらくオセローの出身地であるモーリタニアのものである。第三幕第四場のオセローの台詞では、「エジプト人が母に与えた」(3.4.54)ものとされているが、第五幕第二場のオセローの台詞では「父が愛のしるしとして母に与えたもの」(5.2.223-24)とされている。
イアーゴーという名前は、テクストに明確な根拠はないが、一般的には、イベリア半島のサンティアゴ・デ・コンポステーラを彷彿とさせる名前と考えられている。サンチャゴとは、多くのムーア人を殺害したことから「ムーア殺しの聖ヤコブ」(Santiago Matamoros)という名でも呼ばれるスペインの守護神、聖ヤコブ(St. Jacob)のことである。