リベラルアーツ英語検定クイズロミオとジュリエット > 2014年11月27日更新分(3/3)

《第9問》
【問題8に “brawling love” と“serious vanity” が出てきたので、これらに関連した問題を一つ。】この二つの表現が出てくる第一幕第一場のロミオの台詞には、他にも水と油のように語呂の合わない語を組み 合わせた表現(”heavy lightness”、“cold fire”、“sick health” 等)が見えるが、こうした表現を何というか?

正解

不正解

解説

調和しない言葉や矛盾する言葉をあえて組み合わせた撞着語法(オクシモロン)が、 シェイクスピアの芝居ではよく使用される。『ロミオとジュリエット』でもオクシモロンが頻繁に使われ、作品の言語的特徴の一つをなしている。 brawling love(憎しみながらの恋)やloving hate(恋ゆえの憎しみ)が出てくる。

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第一幕第一場のロミオの台詞:「. . . ああ、憎しみながらの恋、恋ゆえの憎しみ。/ああ、そもそも無から生まれたもの(anything of nothing first create)!憂いに沈む浮気心(heavy lightness)、深刻な軽薄さ(serious vanity)、/形の整ったもの(well-seeming forms)のなかの歪んだ混沌(misshapen chaos)!/鉛の羽根(feather of lead)、明るい煙(bright smoke)、冷たい炎(cold fire)、病んだ健康(sick health). . .」。この場面のロミオの台詞は、オクシモロンが頻発する箇所として有名である。

シェイクスピアの芝居では、「撞着」は言語レベルのみに止まらず、劇世界全体を支配する原理にもなっている。そもそも、当時の舞台では、男の役者が女を演 じていた。つまり、芝居は、男であって女というオクシモロンがまかり通る世界なのである。その男によって演じられた女は、また、(例えば、『十二夜』の ヴァイオラや『お気に召すまま』のロザリンドのように)劇世界の中で男に扮装することもある。実在しないはずの死者が亡霊の姿で舞台上に「実在」するし、 悪が善を演じ、善が悪に扮することもある。そして、それを、観客が受け入れるのである。二項対立という、現実世界に生きる私たちの認知システムの基盤が、 彼の劇世界ではいとも易く崩壊するのである。

 そもそも、『ロミオとジュリエット』という芝居は、憎悪(hate)から生じた愛(love)―― いや、愛へと発展してゆく憎悪を、ないしは憎悪である愛――という、にわかには理解し難いオクシモロンが生じうる世界を描いた芝居である。しかし、シェイ クスピアは、その夢にも似た世界を、現実よりもリアルに描いてみせる手腕を発揮しているのである。

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