リベラルアーツ英語検定クイズカズオ・イシグロ > 2016年07月21日更新分(1/1)

《第21問》
『わたしを離さないで』でヘールシャムを卒業したキャシーらは、コテージ(Cottages)というファーム・ハウスで新生活をはじめる。ある日、先輩(the veterans)が「あるもの」を見かけたとルースに伝える。その「あるもの」とはなにか?

正解

不正解

解説

ヘールシャムを卒業すると、キャシーらは八人でコテージに移り住む。そのほかの者は各々、ホワイト・マンション(the White Mansion)やポプラ・ファーム(Popular Farm)などと呼ばれる施設へと振り分けられ、そこで「提供(donation)」や「介護(caring)」がはじまるまでの自由な時間を過ごすのである。
コテージには、キャシーらよりも先にそこに住んでいる「先輩たち」がいる。彼らは、コテージの中心にある暖炉のまわりで団を取り、キャシーらが早く馴染むようになにかと手助けをしてくれる。それでも慣れるまでは、キャシーらは集団で動き、外で呆然と立ちつくすこともあった。(P117)しかし、最初の冬が訪れる頃には、全員集団生活にも慣れてくる。
そんなある日、先輩のロドニー(Rodney)とクリッシー(Chrissie)は、ノーフォーク(Norfolk)の北海岸にあるクローマ(Cromer)という町で「あるもの」を見かけたとルースに伝える。そのときの状況を、ルースはキャシーに次のように説明する。「彼らがいうには、ある・・・人をみたって。オープンプランのオフィスで働いているんだって。それでね、その、なんていうか。もしかしたら、「ポシブル」じゃないかって。わたしの」。(P136)「ポシブル」とは、クローンであるキャシーやルースなどの複製元のことを指す。つまり、「親」のような存在である。そこでキャシー、トミー、ルースらは、ロドニーとクリッシーの運転する車に便乗し、その「ポシブル」を確かめに出かける。その女性は、確かにオープンプランのオフィスで働き、遠目にはルースに似ているように感じられる。彼女が事務所を出て、ポートウェイ・スタジオ(the Portway Studios)と呼ばれる画廊へ入ると、皆も後を追って入っていく。しかし、近くで見ると、誰の目にもルースの「ポシブル」ではないことが明らかになる。親を探しに行くというモチーフは、イシグロの『わたしたちが孤児だったころ』にもつかわれている。
余談だが、b)のサンダーは、ルースのお気に入りの架空の馬である。

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