リベラルアーツ英語検定クイズカズオ・イシグロ > 2016年02月18日更新分(1/1)

《第3問》
『日の名残り』の主人公スティーブンスがダーリントン・ホールで従事している職業は次のうちのどれか?

正解

不正解

解説

『日の名残り』(The Remains of the Day)の主人公スティーブンスは長年ダーリントン・ホールで雇われている執事(butler)である。執事の品格について滔々と語るように、スティーブンスは自らの職に誇りを持っている。スティーブンスが仕えた故ダーリントン卿はかつてイギリスの外務省に勤め、のちに裏舞台で国際政治の舵を取ろうとした貴族であった。有能であると自負するスティーブンスの執事としてのプロ意識は、故ダーリントン卿に仕えた過去と無縁ではありえない。ダーリントン卿の没後、屋敷の所有権はアメリカ人のファラディ氏に渡り、現在はこのファラディ氏のもとで同じく執事として働いている。
英語では使用人を指してdownstairsというように、使用人と雇用主との間には明確な線引きがあった。男性使用人の最上位の職にあったのが執事である。食事の接客、銀器や酒の管理を担当した。女性使用人はハウスキーパー(housekeeper)が同等の職位にあたる。本作に登場するミス・ケントンはこのハウスキーパーである(ただしハウスキーパーの敬称は独身でもミセスが一般的)。

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本作には登場しないが、大邸宅には専属の運転手(馬車の時代は御者)もいた。近年イギリスで人気を博したテレビドラマ『ダウントン・アビー』(Downton Abbey)はクローリー家と使用人たちの波瀾万丈を描いた作品だが、クローリー家の三女と運転手とが結ばれるというストーリーの展開は、スティーブンスなら顔をしかめるにちがいない。

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