リベラルアーツ英語検定クイズロミオとジュリエット > 2014年11月13日更新分(3/3)

《第6問》
『ロミオとジュリエット』が最初に本として出版された時、その表題はどうなっていたか?

正解

不正解

解説

表題に見える “conceited” とは、「お洒落な韻文で綴られた」という意味。また、この本には、「ハンズドン卿の一座によってしばしば(喝采を受けて)公に上演されてきた形のままに」(As it hath been often (with great applause) plaid publiquely, by the right Honourable the L. of Hunsdon his Seruants.”)という宣伝文句が記されている。「ハンズドン卿の一座」とは、シェイクスピアが株主となった劇団(いわゆる宮内大臣一座や国王一座の名で呼ばれる一座)の1596年-1597年頃の通称である。

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『ロミオとジュリエット』が最初に本として出版されたのは、1597年。当時の多くの芝居本がそうであったように、この芝居本も、クォート(Quarto)と称される四つ折本(一枚の全紙を四つ折りし、四葉八頁とする縦二十四センチ・横十八センチ程の本)の形で出版された。表題に見える “conceited” とは、「お洒落な韻文で綴られた」という意味。また、この本には、「ハンズドン卿の一座によってしばしば(喝采を受けて)公に上演されてきた形のままに」(As it hath been often (with great applause) plaid publiquely, by the right Honourable the L. of Hunsdon his Seruants.”)という宣伝文句が記されている。「ハンズドン卿の一座」とは、シェイクスピアが株主となった劇団(いわゆる宮内大臣一座や国王一座の名で呼ばれる一座)の1596年-1597年頃の通称である。
 この宣伝文句に偽りはないと考えられるが、この版は、後に出版されるクォート(1599年に出版されている)に比べて本文の質が劣ること、そして、おそらく作家の意図した作品の形からかけ離れていると推定されることから、「質の悪いクォート」(Bad Quarto)と呼ばれてきた。この版は、作者の草稿(foul papers)に基づいて印刷された版ではなく、舞台を演じたある役者の記憶に基づくもの(memorial reconstruction)ではないかと考える学者もいるが、実際のところはよく分からない。しかし、この版が、少なくともある時期に公設劇場で上演されていた形により近いということはいえると思う。この版を印刷したのは、ジョン・ダンター(John Danter, fl. 1582-1598)という人物であるが――(ただし、エドワード・オールド(Edward Allde, d. 1628)という別の印刷業者が大方の作業を下請けしたことは付記しておく必要があるが)――、ダンターは、演劇界の重鎮達と親交があった。
 a) は、既出のアーサー・ブルックによる種本の表題。b)は、1599年に出版されたクォートの表題。このクォートには、「新たに改定、加筆及び修正されたもの。真に名誉ある宮内大臣の一座によって公に幾度も演じられてきた形のままに。」(“Newly corrected, augmented, and amended: As it hath bene sundry times publiquely acted, by the right Honourable the Lord Chamberlaine his Seruenats.”)という宣伝文句が記されている。「加筆及び修正された」というが、本文にはどうしても辻褄が合わない箇所もあることなどから、実際には作者の foul papers に近いのではないかと考えられることが多い。このクォートは、伝統的に「質の良い版」(Good Quarto)と呼ばれていて、1623年に出版されたシェイクスピア作品集(通称ファースト・フォリオ)の本文も大方このクォートに基づいている。
 シェイクスピア研究者達は、1597年版を第一・四つ折本(Q1)、1599年版を第二・四つ折本(Q2)と呼んでいる。

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