リベラルアーツ英語検定クイズロミオとジュリエット > 2015年04月30日更新分(2/3)

《第32問》
『情熱の巡礼者』(The Passionate Pilgrim, 1599)のある部分に、『ロミオとジュリエット』第二幕第二場のバルコニー・シーンとよく似た描写がみえる。どこにそれがみえるか?

正解

不正解

解説

 『情熱の巡礼者』(1599)の第十四歌が、『ロミオとジュリエット』のバルコニー・シーンにおける恋人達の対話を彷彿とさせることは有名である。シェイクスピアの『ヴィーナスとアドーニス』(1593)が基調とする六行連形式で書かれたこの詩は、シェイクスピアの作風を思わせるが、本当にシェイクスピアの手になるものなのかどうかは分からない。また、この詩集のタイトルにある「巡礼者」(pilgrim)は、ロミオとジュリエットの対話の中でロミオがそう呼ばれていることに因んでいるかもしれないと考えられている。いずれにせよ、この詩は、『ロミオとジュリエット』と深く関係したものであることは確かであり、注目に値する。

より詳しい解説を読む

 この詩集(1599年版と1612年版の一部)の表題ページには、‘By W. Shakespeare’ と印刷されているが、この詩集は、実際には、後にファースト・フォリオ(1623)を世に出すことになる出版者ウィリアム・ジャガードが、シェイクスピア自身を含む複数の詩人たちの手になる二十編の詩を抜粋し、そして、おそらくはそれらを編集して出版したものであり、現代人の感覚からすれば、シェイクスピア詩集の「偽装」版である。この詩集の初版は1598年に出版され、その一部分がワシントンDCのフォルジャー・シェイクスピア図書館に所蔵されているが、表題ページは残っていない。
 ルーカス・アーン(Lukas Erne, Shakespeare and the Book Trade, Cambridge University Press, 2013)は、ジャガードがこのような偽りの詩集を出版したことは、1598年頃には、すでに「シェイクスピア」という名前が市場性を帯びるようになっていたことを物語っているという趣旨の見解を示している(上掲書、p. 86)。また、彼は、1598年頃には、『ロミオとジュリエット』も人気の絶頂にあり、それが、ジャガードがバルコニー・シーンを彷彿とさせる詩をこの本に載せる動機となったのであろうという趣旨の推論を展開している(上掲書、p. 88)。

戻る 次へ