リベラルアーツ英語検定クイズロミオとジュリエット > 2015年03月19日更新分(2/3)

《第26問》
ティボルトについての説明として正しいものはどれか?

正解

不正解

解説

ティボルトがキャピュレット夫人の甥であると判断できる根拠は、第三幕第一場に見える同夫人の「甥のティボルト!おお、兄の息子!」(‘Tybalt, my cousin! O my brother’s child!’ [3.1.137])という嘆きの台詞である。

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 この芝居に関する興味深い点の一つとして、モンタギューとキャピュレットの不和が発端となっているはずの悲劇でありながら、悲劇をもたらす殺傷事件を扇動するのは純粋な両家の血族ではないという事実がある。幕開けの場面で喧嘩騒動のきっかけをつくるのも両家の召使達であるし、また第三幕第一場で喧嘩を扇動するのも両家とは直接血の繋がりをもたないマキューシオとティボルトである。一方、ロミオは、「こうなれば復讐に燃え」(‘but newly entertained revenge’ [3.1.162])、ティボルトと「稲妻のような斬り合い」になったというが、彼を動かした復讐心は、両家の「いにしえの遺恨」とはまったく無関係であり、友人を殺した者に対して向けられたものである。
 敵によって流された一族の血をその敵の血であがなおうとする、復讐悲劇にお決まりの人物が両家の中心にもう一人存在するとすれば、それはキャピュレット夫人である。第三幕第一場に、キャピュレット夫人が、「わが一族の血のあがないに、モンタギューの血を」と大公に嘆願する場面がある。しかし、ここで夫人のいう「わが一族」(‘our kinsman’)とは、必ずしもキャピュレット家のことではない。流されたティボルトの血は夫人の一族の血であり、厳密な意味でキャピュレットの血ではないからである(*)。ブルックの種本では、「キャピュレット家の者達」がティボルトを殺したロミオへの法の裁きを大公に求めているが、シェイクスピアはキャピュレット夫人のみにそれを嘆願させている。
 つまり、『ロミオとジュリエット』では、ティボルトの存在によって、「いにしえの遺恨」なるものがじつは両家それ自体には存在していないのかもしれないという可能性が示唆されているといえる。

*キャピュレット夫人は、‘O Prince ! O husband! O, the blood is spilled / Of my dear kinsman’ (3.1.138-39, emphasis mine) とも言っている。

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