リベラルアーツ英語検定クイズロミオとジュリエット > 2015年03月19日更新分(1/3)

《第25問》
『ロミオとジュリエット』は、幕開けから最終場面までで約何日間の物語であるか?

正解

不正解

解説

第一日目(日曜)には、路上での喧嘩からロミオとジュリエットの出会いまでの事件が起こる。日付が替わって第二日目(月曜)には、早朝にロミオとジュリエットが結婚を誓い、その日の午後に二人が結婚する。同じ日に、マキューシオが没し、ロミオがティボルトを殺傷する事件が起こる。そして、その夜、新婚夫婦が悲痛をこらえて床入りをする。第三日目(火曜)は後朝の別れで夜が明け、二日後にジュリエットがパリスに嫁ぐ段取りがなされる。その夜、ジュリエットは仮死をもたらす薬を服用して眠りにつく。そして、第四日目(水曜)、ジュリエットの葬儀が執り行なわれる。

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ここまでは分かりやすい。
 しかし、ジュリエットの埋葬から最終場面までの時間の流れが、理性をもってテクストを精読する者には理解しにくく、研究者の間でも見解が一致しない。まず、ジュリエットの「訃報」をマンチュアのロミオが知ったのは何時なのか正確には分からない。バルサザーが早馬を走らせ、その日のうちに直ちにロミオに訃報を伝え、またその日のうちにロミオがヴェローナに戻り、その夜をもって終幕するとも解釈できる。(ちなみに、ヴェローナとマンチュアは二〇マイルほどしか離れていない。)しかし、ジュリエットが服用した薬の効能は、少なくともテクストに従えば「四十二時間」持続するという。すると、ジュリエットが目を覚ますのは、第五日目(木曜)の夜という計算になる。では、第五日目の夜をもって劇終了かというと、必ずしもそうはいえない。第五幕第三場で、夜警の一人が、ジュリエットについて「二日前、ここに葬られたはず」と明言しているので、その陳述を信じるなら、この場面は第六日目(金曜)の早朝の出来事を描いているとも解釈できるのである。
 四日間説を唱えた代表的な研究者は、ハーレー・グランヴィル=バーカー(H. Granville-Barker, Preface to Shakespeare, Princeton UP, 1947, 2.302)とレイモンド・チャップマン(Raymond Chapman, ‘Double Time in Romeo and Juliet’, MLR 46 [1949], 372)である。五日間説を主張したのは、ジョン・ムンロ(John Munro ed., The London Shakespeare, Eyre and Spottiswoode, 1958, 5.120)、カロライン・スパージョン(Caroline Spurgeon, Shakespeare's Imagery and What It Tells Us, Cambridge UP, 1935, 312)、G.B. ハリソン(G. B. Harrison ed., Shakespeare: The Complete Works, Brace & World, 471)である。六日間説は、P. A. ダニエル (P. A. Daniel, A Time Analysis of the Plots of Shakespeare’s Plays’, Transactions of the New Shakespeare Society 1877-9 Series I [1879], 6.191-4)によって提唱された。今日では、アーデン版や新ケンブリッジ版は五日間説を支持し、オクスフォード版(Jill L. Levenson ed., Romeo and Juliet, Oxford UP, 2000, 307, n.105)は六日間説を示唆している。河合祥一郎は、『ロミオとジュリエット』の時間は「4日であり、5日であり、6日である」といい、この芝居の時間の描写には「観客の目の前ですべてを披露しているはずなのに、気づかれないように観客の目を盗んで、思いもかけぬ展開をみせる. . . テーブル・マジックのようなシェイクスピアの劇作テクニック」が使われていると述べている(『「ロミオとジュリエット」恋におちる演劇術』,みすず書房,2005,10)。

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