リベラルアーツ英語検定クイズロミオとジュリエット > 2015年11月05日更新分(1/1)

《第65問》
第三幕第一場で、マキューシオが死んだことを知ったロミオは、「今日の禍(わざわい)は、この先の日々に暗く垂れこめている。/これはほんの手始め、続く不幸が決着をつけることになる」という。この台詞は、四大悲劇に登場するある人物の「不幸は単独ではなく、大挙してやってくる」という主旨の名台詞を想起させる。それを述べる人物は誰か?

正解

不正解

解説

ロミオが、幸運の絶頂にある者の転落を描く de casibus tragedy における主人公の典型であることは、問題36の解説で述べた通りである。マキューシオの死を皮切りに「今日の禍(わざわい)は、この先の日々に暗く垂れこめている。/これはほんの手始め、続く不幸が決着をつけることになる」というロミオは、自分が悲劇的運命に操られてゆく人物であることを自覚しはじめている。シェイクスピアの悲劇的人物達は皆このような「転落」を経験するが、その境遇を、「不幸は単独ではなく、大挙してやってくる」という主旨のたいへん印象深い名台詞で語った人物は、『ハムレット』に登場するクローディアスである。

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宮廷でポローニアスが殺され、ハムレットは追放の身となり、デンマークの治安は乱れ、オフィーリアが狂乱の様相を呈し始め、そして、レアティーズが王権を揺さぶる脅威となりつつあるという一連の悲劇的出来事に言及して、クローディアスはこう言っている。

                     O Gertrude, Gertrude,
  When sorrows come they come not single spies,
  But in battalions. (Ham., 4.5.73-75)

 拙訳)            おお、ガートルードよ
  悲しみが訪れるとき、それは単独ではなく、
  大挙してやってくるものだな。

悲劇的人物が、これから次々に悲運に見舞われることを予言し、その恐怖を台詞に言い表して観客と共有することは、de casibus tragedy にお決まりの形式であった。そして、いかに印象深い言葉で人物にその予言を語らせるかが、詩人の力量のみせどころであった。

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