リベラルアーツ英語検定クイズカズオ・イシグロ > 2016年02月25日更新分(1/1)

《第4問》
『充たされざる者』で主人公ライダーが訪れた「町」で開かれる予定の音楽会の名前は?

正解

不正解

解説

イシグロの第4長編『充たされざる者』(The Unconsoled)は、著名なピアニストである語り手ライダーがある町で開かれる音楽会、「木曜の夕べ(Thursday Night)」のために訪れた3日間あまりの出来事を描いている。「木曜の夕べ」には他にも年老いた指揮者のブロツキーや若きピアニストのシュテファンなどが出演を予定しているが、彼らはそれぞれ個人的な理由があって演奏会での成功を意気込んでいる。ライダーは彼らを含むさまざまな町の住人に会って依頼や相談を受けながら町を動き回るが、その過程で彼自身が抱える課題や問題も次第に明らかになってゆくのである。

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本作は『日の名残り』から6年を経て1995年に出版されたが、前作の静謐な語りとは対照的に、不明瞭で不可解な点を多く含みながら物語が展開してゆく。町がどこにあるのかも明示されていない(中央ヨーロッパのどこかと推測できるのみ)し、町が直面しているという「危機」が何なのかも結局は明らかにされない。またライダーの語る時間や場所も一貫していないため、読者はそれが彼の実際の体験についてなのか、夢や想像についてなのか分からなくなってしまう。
イシグロ自身は『日の名残り』の成功の後、まったく違った作品を書きたかったことを明らかにしている(1)が、カフカにも例えられる不条理な雰囲気への振幅は時に読者を戸惑わせ、出版当時は「失敗作だ」とする書評も少なからずあった。だが出版から20年を経てイシグロの作家としての目標がより具体的になったいま、近年の作品との関係も含めた新たな視点で読み直されることが求められている作品ではないだろうか。

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(1)Brian Shaffer ed, Conversations with Kazuo Ishiguro (Jackson: UP of Mississippi, 2008), 112-13, 128.

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