リベラルアーツ英語検定クイズロミオとジュリエット > 2015年01月01日更新分(1/3)

《第13問》
『ロミオとジュリエット』が初演された頃、第二幕第四場に登場する乳母の召使いピーターを演じたことが、現存する資料から分かっている役者は誰か?

正解

不正解

解説

Q2(1599)の第二幕第四場にあたる箇所で、乳母の召使いピーターの登場を示すト書きが “Enter Will Kemp.” (Q2, K3v)となっている。また、芝居の文脈から、ピーターは、Q1(1597)では「道化」(Clown)とも呼ばれるキャピュレットの召使い (Servingmen)の一人と同一人物であると想像できるが、Q1には、キャピュレットがこの人物を“Will”という名前で呼ぶくだりがある (Q1, I1r)。当時の芝居本には、役者名と人物名が混同している例がよく見受けられるので、この “Will” はWill Kempのことではないかと考えられている。このような根拠から、ピーターという道化は、ウィリアム・ケンプを想定して書かれたものであると推定されている。

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 ウィリアム・ケンプ(William Kemp(e), fl. 1585-03)は、道化役を得意とした当時の超人気役者。宮内大臣一座が結成された頃の株主の一人であったことが分かっているが、1599年頃、何らか の理由で、一座を離れたと考えられている。ジグ(風刺や猥雑な台詞を含んだ歌による寸劇)の演技者、モリス・ダンス(道化に先導されながら仮装して踊る舞 踏)の踊り手としても有名で、ロンドンからノリッチまで百マイルもの道のりを、モリス・ダンスをしながら練り歩いた旅の記録を、『ケンプのナイン・デイ ズ・ワンダー』(Kempe’s Nine Days Wonder, 1600)として出版したことで知られている。
ケンプは、『ヴェローナの二紳士』のランスロット、『タイタス・アンドロニカス』の道化、『夏の夜の夢』のボトム、『から騒ぎ』のドクベ リーなども演じたと考えられている。また、フォルスタッフもケンプの人物像を想定して書かれた人物なのではないかと主張する学者もいる。
 a) エドワード・アレン(Edward Alleyn, 1566-1626)は、1580年代後半頃から海軍大臣一座(Admiral’s Men)を率いた中心人物で、クリストファー・マーローの『タンバレイン』、『フォースタス博士』、『マルタ島のユダヤ人』などで主役を演じ、絶大なる人 気を博した役者。フィリップ・ヘンズローの娘婿にあたる。b) リチャード・バーベッジ(Richard Burbage, c. 1567-1619)はハムレット、オセロー、リアなどを演じた名優で、宮内大臣一座の中心的な役割を担った一人。『ロミオとジュリエット』の初演では、 ロミオを演じたのではないかと考える学者もいるが、それは分からない。

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