リベラルアーツ英語検定クイズロミオとジュリエット > 2015年09月03日更新分(1/1)

《第58問》
シェイクスピアが生きていた時代に上演されたあるシェイクスピア劇の舞台衣装について、それを現代に伝える絵が一枚だけ残っている。その絵はどの劇を描いたものか?

正解

不正解

解説

南イングランドのロングリートという場所にあるバース公爵(Marquess of Bath)邸の図書館に、1594(or 95)年にヘンリー・ピーチャム(Henry Peacham)という人物によって描かれたものと思われる一枚の手稿が所蔵さてれていて、そこに『タイタス・アンドロニカス』の舞台を描いたスケッチと芝居の台詞と思われるものの一部が見える。この有名な手稿はロングリート手稿(Longleat MS)と呼ばれ、シェイクスピア劇の上演当時の舞台衣装を考えるための唯一の視覚資料である。絵の内容とそこに書かれた台詞にテクストと合致しない点もあり、この手稿が当時の上演をどれだけ忠実に再現しうるのかは分からないが、私達に想像のヒントを与えてくれることは確かである。タイタス、タモーラそしてアーロンと思われる大きく描かれた人物達はローマ人を思わせる衣装を身に着けている。それに対し他の人物達の衣装は、十六世紀後半のイギリスのものである。また、アーロンと思われる人物は身体が黒く塗られている(当時の劇場人には黒人はいなかった筈なので、この人物の身体には黒い化粧が施されていると考えられている)。

より詳しい解説を読む

様々な資料から、当時の商業演劇では、一般的に、物語世界の時空を想像させる歴史的衣装が使われていたと同時に、一部の衣装は同時代に流行していたものであったと考えられている。ロングリート手稿の絵が示すように、異なる文化が非常にしばしば同じ舞台上に共存していたことを、当時の芝居テクストを含む多くの資料が裏付けている。また、役者が身に着けていた衣装は高価で優美なものが多く、貴族や富豪商人等を演じる役者の衣装はたいへん豪華なもので、芝居の大きな見どころともなっていた。そして、彼らが使用した衣装の多くは、宮廷人や貴族から払い下げられた品であったことも、当時の劇場経営者として名高いフィリップ・ヘンズロー(Philip Henslowe, ? -1616)の日記や、1599年頃にイギリスに滞在していたトマス・プラター(Thomas Platter, 1574-1628)という人物の日記など複数の資料から分かっている。また、シェイクスピア時代の芝居には、例えば、当時のイングランドでは「異人」であったイスラム教徒のスルタンのような衣装など、外国の衣装や装飾品などへの言及が多く見られ、そうしたアイテムが実際に舞台で使用されていたことを示唆する記述も見られる。

戻る 終了